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zoom RSS 月刊ポエム5月号「家族」

<<   作成日時 : 2013/05/12 13:59   >>

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画像
「あっ」
カメラをのぞきこんでいたヤツが声を漏らした。
「どうした」
声を落として背中を叩く。
「それが」
振り向いたヤツの顔はまるで叱られたガキのよう。代わってカメラ
を目にあてる。夕闇にかすんでいるが異常はすぐにわかった。
「落ちたのか」
ヤツが力なくうなずく。
それは空っぽの巣だった。ようやく歩けるようになっていたが、ま
だ飛べるほどには羽根が整ってはいなかったはずだ。
「自分で歩いて、よろけて、落ちました」
「ふん、それじゃあまた別の巣を見つけて撮り直しだな」
ヒナのいない巣は妙にがらんとしている。親鳥の姿はない。野外収
録ではよくある、ちょっとした事故。ここまで撮り貯めた2週間分
がパーになると思うと、思わず舌打ちしたくなった。おやおや、大
きく後ずさりしたヤツが、テントから出て行こうとしている。
「まさかキサマ、地面に落ちたヒナを助けようというんじゃないだ
ろうな」
カメラを回したままで、尖った声を投げる。テントの幕を押し開こ
うとしたまま、ヤツが動かない。シニアカメラマンの叱責で凍りつ
いたか。
「あのままじゃ、ヒナが野垂れ死にするでしょ。オレ、そんなの見
たくないんです」
搾り出すような声でヤツがうめく。ふん、青臭いヤツだ。ヒナを拾っ
たってあの高い枝の巣にどうやって戻すというのか。まさか、自分
で育てるなんて言い出さないだろうな。
「それが野生の世界だ。人間が干渉しちゃ、番組がヤラセになっち
まうぞ」
「しかし」
しかしも何もない。チラッとヤツを睨んで、ヤツが出て行かないこ
とを確認してから、またカメラに目を当てる。
「おい、耳を澄ませてみろ」
「はい?」
ぴゅるぴゅるー。
「聞こえたか?」
「はい、しかしあれは」
ヒナの異変に気づいて、親鳥が帰ってきたのだ。そして落ちたヒナ
を必死で探している。
「野生の家族意識は、おそらく人間のそれより単純で強い。心配す
るな。ほらよ」
ヤツにカメラを代わってやると、ヤツは飛びついた。
「あ、親鳥がヒナを巣に戻してます」
「カメラ、回ってるだろうな」
「もちろんです!」
低いが元気な声が返ってきた。やれやれ。
 
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         今月のテーマ素材:  [家族]

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          [今月の巻頭詩]


      ひとり暮らし

      寂しいわけではないけれど
      楽しそうな家族連れを
      避けながら歩く
      休日の繁華街

      実希
      2013/05/10 23:56

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   ▽△▽△  4 行 詩 の 展 覧 会  △▽△▽ 

         テーマ素材 「 家族 」

   壁に父あり障子に母あり ‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 作詩屋
   無題 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ムロ異性
   家族軍団 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 森静野
   フルハウス ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ aoi
   ひとり暮らし ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 実希


 ●作品表示の凡例 (作品は投稿順に並べてあります)
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タイトル
 4行詩本文
 (あとがき)
ペンネーム
投稿日時
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壁に父あり障子に母あり

自分が誰に何を言ったか
推し量っている父がいて
自分がどこで何をしたか
見透かしている母がいる

作詩屋
2013/04/17 04:42
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無題

父を野菜だと思う事が有る
区費の回収に余念がなく
一日中動き詰めに動いている
邪魔なラジオをどかしながら

ムロ異性
2013/04/18 02:16
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家族軍団

身内だけしか目に入れない
そんな家族軍団がちらほら
そこのけと割り込むベビーカー
俺の足を踏んでいるって

(あとがき)
こういうの「ヤンキー体質」と言うのだってね。

森静野
2013/04/29 10:27
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フルハウス

父のない子と夫のない妻
「まま、おばあちゃん、ままのおねえちゃん。
ぼくの家族はいっぱいいるよ」
子どもの声で家庭が満ちる

aoi
2013/05/04 17:21
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ひとり暮らし

寂しいわけではないけれど
楽しそうな家族連れを
避けながら歩く
休日の繁華街

実希
2013/05/10 23:56
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[記録室]
投稿全作品数:16
推薦詩:5
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◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 編集室から ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

東京から北アルプスを抜けて新潟へ。初めて日本海の海辺に立って
みました。あいにくの雨と風で、気温も10度以下とまだ春とは言
えないくらいの暗めの海色でしたが、なぜかそれが私の持つイメー
ジとしっくり重なってしまいました。明るい湘南の海を見て、ある
種の予見というか、期待があったようです。三日のうちの最後の日
だけが晴れ。能生の海岸にはためく鯉幟の彩が見事でした。

今月は「家族」というテーマでした。巻頭には実希さんの「ひとり
暮らし」を選びました。この寂しくはないと言いたいんだけど、な
んかやっぱり避けたい感じ、じわっとわかります。ムロ異性さんの
父親像、作詩屋さんの父母イメージ、森静野さんの軍団の存在感、
そしてaoiさんの子どもの言葉たち、多様な家族の断片がキラキラし
てました。

6月号のテーマ素材は「癖(くせ)Habit」

癖(くせ)とは、人が無意識のうちに、あるいは特に強く意識する
ことなく行う習慣的な行動のことである。手足や体の動かし方、話
し方などで同様な状況のもとで常に自動的に繰り返される傾向。広
い意味では習慣の一種とみられるが、極端な場合には通常よりも不
必要に偏向した反応として現れる。

自分は気づいていないという場合が多い。また、気づいていたとし
ても、特に強く意識せずに行っている行動も含む。一般に、高齢に
なるほど習慣で行動する傾向が強まり、そのため癖が付くとなかな
か直らない傾向になる事が多い。

あなたのまわりの気になる「癖」を四行詩でお寄せください。
6月号の発行予定は6月9日です。


                    編集人 ジョッシュ
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 メールマガジン: 詩とエッセイの月刊ポエム5月号
     発行日: 2013年5月12日(通算192号)
   総発行部数: 約200
     発行元: mbooks(ジョッシュ)
          http://4poem.at.webry.info/
     連絡先: prn81060_mbooks2アットyahoo.co.jp
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