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zoom RSS 月刊ポエム7月号「世辞」

<<   作成日時 : 2013/07/07 07:20   >>

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             「世辞」

ひとりふたりと精悍な顔が走り抜けていく。まだ来ない。見通しの
よい中央通りだから、そんなはずはないと自分に言い聞かせるが、
次第に胸の下あたりから苦いものがじわっと染みあがる。
「きみが走るべきだ」
言い出したのは誰だったか。しかし、そんな詮索は意味がない。ク
ラスのほとんど全員が同意した。学級委員長で柔道部の主将。大き
な地声でがははと豪快に笑われてしまうと、たいていのトラブルは
つまらない些少なものになって雲散霧消。
「勝負どころは直線の長い中央通りとみた」
彼自身がそう言ったのだ。そして誰がいい?と尋ねた。何人かの視
線を感じた。しかしそのときに高い声がクラスのどこかから飛んで
きたのだ。
「モリくんをスイセンしまーす」
声の主は続けた。
「足は速いし、体力あるし、きっとがんばってくれるよ」
「そうだ、そうだ。モリくんがいい」

大差でぶっちぎり。
クラスのみんなはそう思ってた。応援の多い中央通りを先頭で駆け
抜けるモリ。それは彼によく似合っている。柔道は県大会個人優勝、
英語スピーチでは地区推薦、学力テストでは県でトップ10。モリ
のスーパーぶりは枚挙にいとまがない。
しかし、来ない。

「来た」
トップが通り過ぎてたっぷり五分。中学生にしては肩が盛り上がっ
たシルエットがようやく見えてくる。体が左右にぶれているのが遠
めにもよくわかる。胸の苦味が痛みに変わる。その痛みは後悔とい
うふた文字。あの時、口に出かけた言葉がよみがえる。
「長距離走は柔道とは違うんだ。そんな世辞で走れるほど甘くはな
いぞ」
モリの柔道は長くてもせいぜい3分勝負。駅伝はその十倍は走る。
同じような結果を求めるのは酷というものだ。

モリが苦しげな顔で通り過ぎる。
「がんばって」
いっせいにクラスのみんなが声を張る。するとモリのきつそうな顔
が僕らのほうに向いた。口が動いている。

ブタモオダテリャキニノボル。

そして、がははと笑いかけて、咳き込んでいる。よせよせ、モリ。
それはムリだ。そこでスーパーモリをやるなんて。まだあと2キロ
はある。ゆっくり行ってくれ。
しかしモリはやっぱり、スーパーだった。僕らの目の前でまさかの
スパート。そのまま、だだだっと走り抜けていく。

ブタモオダテリャキニノボル。

マジかよ。
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         今月のテーマ素材:  [世辞]

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          [今月の巻頭詩]

      美辞麗句

      せせらぎのように
      煌めいて 流れて
      川底の形を隠して
      言葉は後に残らず

      aoi
      2013/07/06 11:30

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   ▽△▽△  4 行 詩 の 展 覧 会  △▽△▽ 

         テーマ素材 「 世辞 」

   世辞 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 森静野
   世辞 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ チビ○
   休日の午後 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 動物病院
   美辞麗句 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ aoi
   友 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 実希

 ●作品表示の凡例 (作品は投稿順に並べてあります)
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タイトル
 4行詩本文
 (あとがき)
ペンネーム
投稿日時
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世辞

世辞などいらない
私はあなたに無関心だ
私にも無関心でいて欲しい
そんな初夏

(あとがき)
無理して生きることの無意味さよ。

森静野
2013/06/28 05:13
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世辞

そんなこと言ったって分かってる
分かってるけど心地いい
弱さと戦いながらも
耳触りのいい言葉にもてあそばれてる

褒められると駄目になるタイプです。

チビ○
2013/07/02 12:06
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休日の午後

見え透いた世辞には興味は無いが
君の世辞には心が揺れる
もしかして本音なのか?
そんな妄想を楽しむ 日曜の午後

動物病院
2013/07/06 10:27
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美辞麗句

せせらぎのように
煌めいて 流れて
川底の形を隠して
言葉は後に残らず

aoi
2013/07/06 11:30
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お世辞のひとつも言えない
思ったことがすぐ顔に出る
わかりやすい性格だと笑いながら
そのままのあなたでいてねと真顔になる友

実希
2013/07/06 23:36
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[記録室]
投稿全作品数:13
推薦詩:5
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◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 編集室から ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

暑中お見舞い申し上げます。

梅雨明け宣言を待っていたら、猛暑がやってきました。日本各地で
はゲリラ豪雨の被害も出ていますが、みなさんのところは大丈夫で
しょうか。こちら横浜は台風並みの突風。いろいろなゴミが吹き飛
ばされ、とても危険なようです。用事が無い日曜日はじっと家でケ
ーブルTVでも観てようかな。

今月は「世辞」というテーマでした。巻頭にはaoiさんの「美辞麗句」
を選びました。世辞の向こうにある真意はなかなか汲み取れません
が、それを川面に反射する陽射しと喩して佳しです。ちなみにこち
らでの編集人のコメントに「世辞」はありませんので、念のため。

8月号のテーマ素材は「地味(Plain)」

じみ【地味】とは、形や模様などにはなやかさがなく、目立たない
こと。また性質や物の考え方・生活態度などが、飾り気がなくて控
え目なこと。

あれこれ派手な出来事が多い昨今ですが、それでも地味に起きてい
る事柄が何かと気になりませんか。あなたにとっての地味な出来事
を四行詩でお寄せください。

8月号の発行予定は8月11日です。

                    編集人 ジョッシュ

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 メールマガジン: 詩とエッセイの月刊ポエム7月号
     発行日: 2013年7月7日(通算194号)
   総発行部数: 約200
     発行元: mbooks(ジョッシュ)
          http://4poem.at.webry.info/
     連絡先: prn81060_mbooks2アットyahoo.co.jp
          (アットを@マークにして送信ください)
     著作権: 著作権はmbooksおよび各作者にあります。 
          転載や引用は必ず事前にご相談ください。
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