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zoom RSS 月刊ポエム2月号「隣り」

<<   作成日時 : 2014/02/02 14:19   >>

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            「隣り」

電車は2両めがいい。それも南のいちばん奥。そこは優先席ではないか
ら、始発朝イチなら堂々と座れるし、乗降口からも離れていて静か。
座ってすぐに文庫本を開いて、20世紀の古典ミステリに没頭する。乗
換駅までのささやかな至福の時間だ。春分の今朝も、いつものように胸
ポケットから文庫本を取り出そうとして、異変に気づいた。僕の隣りに
だれかが静かに座ってきたのだ。車内はがらがら。なぜわざわざ僕の隣
りに座るんだ。ちらと横目でチェックする。
「アガサ・クリスティなのね」
にっと笑っていた。白い前歯はきれいに並んでいる。
「名探偵ポワロ?」
「いや、ミスマープルのほうだけど」
つい返事をしてから後悔する。この笑顔に朝の貴重な読書時間を奪われた
くない。それきりのつもりで、文庫本に目線を移したとたん、隣りから手
が伸びてきた。
「それ、アタシまだ読んでないんだ。だから、他のにしてもらえない」
「は?」
細めの手は意外にも俊敏に動き、僕の文庫本を奪い取る。何が起きたんだ
か、一瞬理解できない僕は隣りの乗客に思いっきり非難の視線を投げてみ
る。しかし、再び開いた白い前歯が僕の視線をあっけなく弾き飛ばした。
「神保町まででしょ。そしたら代わりにこれ読んでてよ」
僕のひざには平べったいタブレット。表紙には「クリスティ短編集」とあ
る。タブレットだけを僕のひざの上に残し、細い指はさっと視界から消え
た。
朝イチの動揺、混乱そして、困惑。
これって何かの始まり?
頭を動かさないようにそうっと隣りを観察してみる。僕から奪った文庫本
を開いて、真剣な表情。さっそく集中しているようだ。
それとも単なる気まぐれ?
ただ、僕はしっかりと見てしまったのだ。タブレットから離れる指にきらっ
と光るものがあったことを。
問題はそれが何本めの指だったか。
う〜ん。
お気に入りのクリスティだけど、今朝はもう集中できない。

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         今月のテーマ素材:  [隣り]

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          [今月の巻頭詩]

      手

      僕が君の左手を握るから
      彼女が君の右手を握るから
      君の両手は凍えない
      君の心は凍えない

      キャプテン
      2014/01/15 19:14

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   ▽△▽△  4 行 詩 の 展 覧 会  △▽△▽ 

         テーマ素材 「 隣り 」

  川の字 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ サヨナキドリ
  手 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ キャプテン
  みかんを分け合う間柄 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ aoi
  一人 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 動物病院
  隣 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 森静野

 ●作品表示の凡例 (作品は投稿順に並べてあります)
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タイトル
 4行詩本文
 (あとがき)
ペンネーム
投稿日時
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川の字

右が父さん 左が母さん
夜な夜なむくりと起き上がり
頭を逆さに寝てしまう
左が父さん 右が母さん

サヨナキドリ
2014/01/05 13:55
----------------------------------------------------------------


僕が君の左手を握るから
彼女が君の右手を握るから
君の両手は凍えない
君の心は凍えない

キャプテン
2014/01/15 19:14
----------------------------------------------------------------
みかんを分け合う間柄

向かい合うのではなくて
目つめあうのではなくて
互いに好きなことをして
同じ空間を共有する距離

aoi
2014/01/26 18:02
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一人

いつも一人の昼食
べつに寂しくもない
後ろ隣りの君も一人
俯く顔は 何を思う

動物病院
2014/01/31 18:46
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危険な世になりやした
刃物が出るか盗撮か
隣は何をする人ぞ
ますます不干渉に生きていく

(あとがき)
みな手の中のスマホに夢中の電車内にて記す。
森静野
2014/02/02 01:35
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[記録室]
投稿全作品数:18
推薦詩:5
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◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 編集室から ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

ソチオリンピックまであと数日。今回も楽しみな競技がたくさんあって、
目が離せません。でも開催地と日本との時差が五時間、ロンドンもそう
でしたが、またまた睡眠不足になる恐れ大ですね。お変わりありません
か。

さて今月のテーマ素材は「隣り」でした。隣り近所とお付き合いは、マ
ンションが林立する首都圏では徐々に希薄になってきたような気がしま
すが、巻頭詩にはキャプテンさんの「手」を選びました。メールやSN
Sなど、お互いの顔を見なくても伝達ができるようになりましたが、や
はり、手をつなぐという行為はお互いの体温を感じて、心が休まるもの
でしょう。サヨナキドリさんの「川の字」、そうそう、我が家の子供た
ちも朝にはよくひっくり返ってたことを思い出して、ちょっと笑ってし
まいました。

3月号のテーマ素材は「理科(Sience)」です。

理科は好きでしたか? どこの小学校にも「理科室」というのがあって
実験とか標本観察とかやりませんでした?そういう世界から育った若い
科学者によるSTAP細胞という魅力的な新しい発見がつい最近ありまし
た。みなさんにとっての「理科」はどんなイメージですか。

3月号の配信は3月2日、投稿締め切りは3月1日です。
4行詩の投稿をお待ちしています。

                    編集人 ジョッシュ

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 メールマガジン: 詩とエッセイの月刊ポエム2月号
     発行日: 2014年2月2日(通算201号)
   総発行部数: 約200
     発行元: mbooks(ジョッシュ)
          http://www2c.biglobe.ne.jp/~joshjosh/
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内 容 ニックネーム/日時
早風呂長風呂をして居ると
鐘の音ががんがん聞こえて来て
私はもう上半身が乾いて居ると言うのにもう一回
「あつく」を付けると自分が理科室の骸骨標本になった様な

*2014年2月11日(火)18時頃の事です。
ロウ異性
2014/02/11 21:21

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