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zoom RSS 月刊ポエム新年1月号「でたらめ」

<<   作成日時 : 2015/01/11 16:10   >>

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でたらめ

「もしもし?」
雨降りの夕方、ワイパーが激しく水滴を飛ばしている。携帯電話が鳴っ
たので、路肩の避難帯に車を停めた。会社の部下だ。
「出張中で申し訳ないんですが」
いつも元気いっぱいの彼女だが、妙に声が低い。
「どうかした?」
東北自動車道の下り線にはずっとテールランプが並んでいる。激しく渋
滞中なのは、明日から世間は連休に入るから。おかげでノロノロ運転を
もう1時間以上続けていた。缶コーヒーでは効き目がないほどに、まぶ
たが重くなっている。しかし、仕事先へはまだ1時間は余計にかかるだ
ろう。
「突然ですけど、来週からしばらく休ませていただきたいと」
声はか細く、まるで電話の向こうで途切れてしまいそうだった。ワイパ
ーを切ると、雨音だけが残った。
「今、なんて言ったんだ。休む?」
「はい。実は悪い知らせなんです」
はっとした。そういえばいつだったか、彼女、体調が悪いんで病院にい
くって言ってたな。
「腫瘍の専門医に診てもらいました。その所見が最悪で」
そこで、声が途切れる。語尾の震えが耳に残った。押し殺したような嗚
咽も。じわっと、どす黒いものが胃の辺りからせり上げてくる。
「どうした」

そこから1分ほど、電話は沈黙した。

雨が激しくなる。撃ちつける雨でフロントグラスはまるで川だ。予報で
は強い低気圧が居座って動かないらしい。せっかくの連休もこれでは台
無しか。

「でたらめ」

「え?」一瞬、気持ちが浮き立つ。
「だったら、いいのにと何度も思いました」
浮揚した感情は、行き場をなくし奈落へと落ちる。
「でも、現実でした。すみません」
「きみが謝ることはない。それに絶対ダメってわけじゃないんだろ」
かろうじて、土俵際で粘ってみる。
「医者もそう言ってました。それで来週すぐに入院しろと」
「精密検査かな」
「はい」

それなら仕方ないなあ。
そんな相槌を打ちながら、彼女の担当している案件を頭の中で数えてみ
る。けっこうな数だ。しかも、重要顧客も数件。来週から休まれるとな
ると結構大変だぞ。検査結果ではもっと長くなるかも。うーん、それな
らあっちをこっちに振り替えて、それと、あれもこれも、そういえばあ
れもだ。

「もしもし」

耳元で、窓ガラスを叩くような音がした。ぱっと目が覚める。いかん、
いつの間にか車の中で眠り込んでしまったらしい。窓ガラスをあけると
若い警官がのぞき込んできた。
「具合でも悪いんですか?」
避難帯で動かない車を見て、声をかけたのだという。いや、ちょっと休
んでいただけだからと頭をかいた。激しかった雨はやんでいた。しかし、
テールランプの行列はそのままだった。はー。ため息をつく。ひざの上
に携帯電話が転がっている。あわてて手に取る。スイッチを入れる。
ひょっとして、さっきの会話はうたた寝の夢ではなかったのか。

祈るような気持ちで、着信履歴を開く。

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         今月のテーマ素材:  [でたらめ]

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          [今月の巻頭詩]

      新年

      不器用とか、でたらめとか
      振り返っては嘆いてみる
      少しだけ自分を許しながら
      また1年が始まる・・・のだ

      チビ○
      2015/01/11 12:30


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   ▽△▽△  4 行 詩 の 展 覧 会  △▽△▽ 

         テーマ素材 「 でたらめ 」

  でたらめ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 森静野
  いい加減 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 作詩屋
  人生双六 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ しゅけ
  新年 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ チビ○

 ●作品表示の凡例 (作品は投稿順に並べてあります)
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タイトル
 4行詩本文
 (あとがき)
ペンネーム
投稿日時
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でたらめ

自由に書くのが難しいように
いざでたらめに書くのも難しい
一つ一つ真剣に生きた跡が
でたらめな人生に見えたら最高だ

(あとがき)
「有意味な」でたらめを目指そう。

森静野
2014/12/14 15:14
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いい加減

遊び言葉が多すぎて
売り言葉はいい加減
逃れ言葉が多すぎて
買い言葉はいい加減

作詩屋
2014/12/15 23:36
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人生双六

今日も今日とて賽を振り
出たら目にマスを進んでく
人生の双六 振り出しに
戻れるものなら戻りたい

しゅけ
2015/01/04 13:17
----------------------------------------------------------------
新年

不器用とか、でたらめとか
振り返っては嘆いてみる
少しだけ自分を許しながら
また1年が始まる・・・のだ

(あとがき)
今年もよろしくお願いいたします。

チビ○
2015/01/11 12:30
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[記録室]
投稿全作品数:10
推薦詩:4
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◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 編集室から ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

新年あけましておめでとうございます。
今年は未(ひつじ)年です。未(ひつじ)が来ると書いて「未来」なん
だとか。なかなかの可能性を秘めた楽しみな一年になりそうな気がしま
す。どうかみなさんの新年が昨年以上に楽しく平穏な一年でありますよ
うに。

さて今月はお正月ですが、らしからぬ「でたらめ」がテーマ素材でした。
しかし、巻頭詩にはチビ○さんの「新年」を選びました。新年を迎える
たびに、それまでを振り返り、少しは違う何かをやろうと思うのですが
なかなかうまくゆきません。それでも、そんな自分と付き合いながら、
また新しい一年。同感です。森静野さんの「でたらめ」、案外、ひとの
やることはでたらめっぽく見えても、それなりの理屈があるもの。自分
だけででたらめに生きるのは、かなり難しいと私も思います。

さて、来月(2月)号のテーマ素材ですが、「目覚め(Waking)」です。

ひとは毎日眠りから覚めて活動を始めます。そしてある日、潜んでいた
本能や能力が働き始めたり、迷いから急に立ち直ったりします。これら
の行動はみな「目覚め」と表現されますが、みなさんの「目覚め」の心
象を四行詩でお寄せください。

2月号の配信は2月8日、投稿締め切りは2月7日です。
4行詩の投稿をお待ちしています。

                    編集人 ジョッシュ

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 メールマガジン: 詩とエッセイの月刊ポエム新年1月号
     発行日: 2015年1月11日(通算212号)
   総発行部数: 約200
     発行元: mbooks(ジョッシュ)
          http://www2c.biglobe.ne.jp/~joshjosh/index.html
     連絡先: prn81060_mbooks2アットyahoo.co.jp
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