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zoom RSS 月刊ポエム4月号「透き間」

<<   作成日時 : 2015/04/05 07:39   >>

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画像


透き間

僕ら二人は走っていた。正門を出てすぐの坂道を駆け上がり、通用門を
押し開く。広々とした第二校庭は運動部員でにぎやかだ。校庭をぐるっ
と取り囲んだ桜の木々もほぼ満開。しかし、そんな景色を楽しむ余裕は
ない。
「ひびが入ってる」
モリのひと言がすべてだった。まさかとは思ったが、やつらの仕業かも
しれない。校庭を突き抜けてさらにもう一段、坂道を登ると金網で囲ま
れた学校プールが見えてくる。プール開きは7月なので誰もいない。走
りを緩めて、念のためにちらっと後ろを振り返る。
「よし、今だ」
僕らは勢いよく金網に取り付いた。プール入り口のドアは施錠されてい
るので、金網をよじ登るしかないのだ。金網の高さは2mくらい。しか
し、躊躇しない。えいやとコンクリート面に飛び降りると、じんと足首
に衝撃が来た。
「いたたた」
毒づきながら、僕らはまた走り出す。25mプール脇のシャワー棟には
鍵はない。いちばん右端、夏にはビニールカーテンがかかっているが、
今は銀色のシャワーガランがむき出しのスペースが目的地だった。
肩で息をしながら、モリが指で示す。
あ。

昨日には確かにきちんと並んでいた壁のカラータイルがあちこちで歪ん
でいた。
「ほら、肝心なところに透き間ができてる」
モリに言われるまでもない。黒とピンクのタイルの間には明らかな透き
間、クラックが見えた。
「あいつら、こんなことまでするか」
僕の素直な疑問だ。いくらライバルとは言え、相手の作品を壊すような
ことまでするだろうか。
「わからんさ。自分らがろくなもの作れてないから、相手をぶっつぶす。
ありうることさ」
タイル自体には傷がついていない。
「それにさ、僕らがここでやってることをなぜ他校のやつらが知ってる?」
さすがにモリは返答に詰まって黙り込む。

「うふふ。何をやってるかと思えば、こういうことか」
背後からの声にぎょっとなった。
「わ、先生か」
「じゃないわよ、まったく。ひどい顔して走ってるからなにかと思った
ら、これ? キミたちのゲージュツ作品ってわけ」
「は〜」
「はい、でしょ。でも惜しいわねえ。けっこう美人に描けてるのに、肝
心の顔の輪郭がぼろぼろじゃん」
先生はタイル画をにやにやしながら眺めている。
「そこ、やられました。たぶん、ライバルのあいつらが妨害に来たんで
す」
「え? そう?」
小首を傾げると、先生は壁に近づきタイルを点検し始めた。顔がタイル
画にくっつきそうだ。その対比に僕らは言葉を失う。
「違うよ、これ。ライバルのせいじゃないわね」
先生が嬉しそうに宣言する。
「キミたちの使った接着剤が壁の塗料を溶かしてしまったのよ。だから、
タイルが少しずれてしまった。それでもじゅうぶん美人だけどね。この
女性」

たは、この裸画のモデルが誰だか、気づかれたか。

僕らは下を向き、ゆっくりと笑った。

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         今月のテーマ素材:  [透き間]

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          [今月の巻頭詩]

      四行の櫺

      終わりだね そろそろ
      四行の
      櫺(れんじ)の朽ちて
      透き間風

      獅子鮟鱇
      2015/04/04 19:29

     (編集人追記)
      れんじ:木・竹などの細い材を、縦または横に一定の間隔
      を置いて、窓や欄間(らんま)に取り付けたもの。

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   ▽△▽△  4 行 詩 の 展 覧 会  △▽△▽ 

         テーマ素材 「 透き間 」

  透き間 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 森静野
  朝の憂うつ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ チピ○
  桜 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ サヨナキドリ
  四行の櫺 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 獅子鮟鱇
  青空 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 実希

 ●作品表示の凡例 (作品は投稿順に並べてあります)
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タイトル
 4行詩本文
 (あとがき)
ペンネーム
投稿日時
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透き間

電車を待つ透き間時間
みんな見ている携帯を
私も見ていることはあるが
今は見ている 携帯持つ人々の群れを

(あとがき)
手のひらの中に幸せはあるのか。

森静野
2015/03/22 13:34
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朝の憂うつ

作り始めて15年
コロッケの横
卵焼きの横
小さな透き間との戦い

チピ○
2015/03/22 20:57
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河川敷の桜並木も
少しは歳をとっただろうか
空元気の隙間に
差し込む一片の春

サヨナキドリ
2015/04/04 09:22
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四行の櫺

終わりだね そろそろ
四行の
櫺(れんじ)の朽ちて
透き間風

獅子鮟鱇
2015/04/04 19:29
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青空

思い惑う心の透き間に
見上げた空の青さがしみ込んで
一歩踏み出す
元気をくれる

実希
2015/04/04 22:31
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[記録室]
投稿全作品数:9
推薦詩:5
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◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 編集室から ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

4月になりました。新学期、新年度など、あちこちで出発、別れそして
再スタートなどが起きているのでしょうか。横浜あたりも桜が満開にな
り、なんとなく心がうきうきしています。花粉症には辟易していますが。

今月のテーマ素材は「透き間」でした。いろいろな意味にとれる素材で
すが、巻頭詩には獅子鮟鱇さんの「四行の櫺」を選びました。まずは
「櫺」の意味を知らず、辞書を引きます。次に、最初の行の「終わりだ
ね」に気持ちが引っ張られ、そして「朽ちて」にちくりという痛み。

森静野さんの「透き間」には共感。私も電車でよく他人の観察をします
が、てのひらをずうっと眺める人が増えましたね、実際。楽しいのかな
あ、あれ、とか、よく思います。

さて、来月(5月)号のテーマ素材は、「魔法(magic)」です。

魔法というと、すぐにハリーポッターや白雪姫の物語を連想する私です
が、あのような魔法使いにならなくても、ふつうの人間にでも魔法みた
いなことができる人は私の周囲にもたくさんいます。ちょっとした日常
の魔法、ぜひ四行詩でお寄せください。

4月号の配信は5月10日、投稿締め切りは5月9日です。
4行詩の投稿をお待ちしています。

                    編集人 ジョッシュ

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 メールマガジン: 詩とエッセイの月刊ポエム4月号
     発行日: 2015年4月5日(通算215号)
   総発行部数: 約200
     発行元: mbooks(ジョッシュ)
          http://www2c.biglobe.ne.jp/~joshjosh/index.html
     連絡先: prn81060_mbooks2アットyahoo.co.jp
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