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zoom RSS 月刊ポエム5月号「魔法」

<<   作成日時 : 2015/05/10 08:07   >>

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魔法

アスファルト道の先に、古びた橋が見えている。欄干の銘は境川橋。
その名が私の記憶を刺激する。ああ、ここは私が生まれた町だ。橋の手
前に小さな魚屋があって、でもそこには飴やら野菜やらも売っていて、
開いた戸口にはいつも初老のおばさんが立っていた。

でも、今日は誰もいない。
店先に置いてあった野菜やら干物を入れた木箱もないし、店の中も薄暗
い。どうやら店の灯りも落ちているらしい。私の生家は魚屋の隣りだっ
た。振り返ろうとするが、なぜか首が硬直して動かない。それなら回れ
右をすればとも思うが、それだけで何かが終わるという嫌な予感がある。

私は一歩、橋へと近づく。
足は軽い。そのまま駆け出したくなるほどだ。幼い頃、よく石投げをし
て遊んだ橋は、昔の石橋のままのようだ。
「そっちは遠い、こっちも遠い」
どこからか懐かしい歌声が聞こえる。石を投げながら歌ったものだ。
そっちは遠い、こっちも遠い。うん?

背中がヒヤリとした。
あの歌は確か、橋を渡るなと言っていた。そっちから通っても、こっち
から渡っても橋の向こうにあるものは。

「おとうちゃん」
耳もとで誰かがささやく。温かい息が耳朶にかかる。目の前に迫ってい
た橋が、灰色の背景に溶け始める。そのまますうっと全てが暗転した。

「おとうちゃん」
重い瞼をゆっくりと開く。白い光が眩しい。溢れる光の中にいくつかの
顔が重なっている。ゆらゆら揺れる顔に記憶の欠片が一致した。

迫る鉄骨の影と右肩の激痛。

「境川橋まで行ってきたよ」
私は呟く。声はしゃがれていたが、そのまま続けた。
「ありがとう、お前のひと声で戻ってこれたみたいだ」
抱きついてきた娘の頭を撫でようとして、私は失敗した。さすがに娘の
魔法でも、私の右手までは元には戻らないらしい。

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         今月のテーマ素材:  [魔法]

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          [今月の巻頭詩]

      魔法

      ぐっすりと眠れた日の翌朝に見るのは
      魔法のように美しい日常の景色
      道端に吹き溜まるゴミでさえも
      美しく感じる心の奇跡

      森静野

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   ▽△▽△  4 行 詩 の 展 覧 会  △▽△▽ 

         テーマ素材 「 魔法 」

  無垢 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 四葉亭
  マジック ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ サヨナキドリ
  春なのに ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ タイム
  魔法 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 森静野
  水割り ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 獅子鮟鱇

 ●作品表示の凡例 (作品は投稿順に並べてあります)
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タイトル
 4行詩本文
 (あとがき)
ペンネーム
投稿日時
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無垢

一口食べては歩き回り
おもちゃはぶんぶん投げ回り
夜泣きでぎゃんぎゃん騒いでも
君が笑えばみんな笑顔

(あとがき)
1歳になる娘の日常です。

四葉亭
2015/04/12 21:00
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マジック

こつこつと積み重ねたからこそ
突然輝く 数年越しの希望
消えてないで 突然なくならないでくれ
少しずつ減らして みんなの夢に変えてくれ

サヨナキドリ
2015/04/21 23:57
----------------------------------------------------------------
春なのに・・・

分離帯の草むらに
花を忘れ 黒い骨になったツツジ
魔法の雨に打たれ
もう一度だけ 綺麗になりたい

タイム
2015/04/29 22:49
----------------------------------------------------------------
魔法

ぐっすりと眠れた日の翌朝に見るのは
魔法のように美しい日常の景色
道端に吹き溜まるゴミでさえも
美しく感じる心の奇跡

(あとがき)
日々疲れていませんか? 
よく眠れば、いつもの景色も変わって見えますよ。

森静野
2015/05/04 11:46
----------------------------------------------------------------
水割り

カウンターの向かいの魔女が囁くに
詩は呪文
氷が融けて
酒泉涌く

獅子鮟鱇
2015/05/06 08:55
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[記録室]
投稿全作品数:10
推薦詩:5
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◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 編集室から ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

五月の大型連休は珍しく好天続きの横浜でしたが、みなさんはいかが
だったでしょうか。久しぶりに庭の芝生でも手入れしようかと思いまし
たら、なんと、芝の間からびっしりと雑草が伸びていてびっくり。手で
抜くのはもう無理なくらいの密生ぶりでしたので、どうしたものかと思
案投げ首です。今月のテーマ素材の「魔法」でも使って、芝生の復活を、
なんて妄想してしまいました。

今月の巻頭詩には森静野さんの「魔法」を選びました。私にも経験があ
りますが、気持ちの持ち方次第でいつもの景色がぜんぜん違って見えた
りします。睡眠たっぷりの朝なんかは、心にもきっと余裕が生まれるん
でしょうね。タイムさんの「春なのに」の気持ち、分かります。分離帯
に花木を植えるのは、車の排気にさらされるので、ほんとかわいそうで
す。

さて、来月(6月)号のテーマ素材は、「雨(rain)」です。

さわやかな五月が過ぎると、長雨の六月がやってきます。雨はいろいろ
な情景に登場し、歌になったり、小説や映画の名場面を演出してくれた
り。あなたの雨の情景、どんな感じですか。ぜひ四行詩でお寄せくださ
い。

6月号の配信は6月7日、投稿締め切りは6月6日です。
4行詩の投稿をお待ちしています。

                    編集人 ジョッシュ

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 メールマガジン: 詩とエッセイの月刊ポエム5月号
     発行日: 2015年5月10日(通算216号)
   総発行部数: 約200
     発行元: mbooks(ジョッシュ)
          http://www2c.biglobe.ne.jp/~joshjosh/index.html
     連絡先: prn81060_mbooks2アットyahoo.co.jp
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     著作権: 著作権はmbooksおよび各作者にあります。 
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内 容 ニックネーム/日時
雨が降りそうな薄暑光だ
やっとドームに辿り着いた
八番ゲートを確認しチケットに消印を押して貰うが
通路と列を取り違えて遅参して仕舞った
ロウ異性
2015/05/23 22:30

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