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zoom RSS 月刊ポエム7月号「夏休み」

<<   作成日時 : 2015/07/05 06:54   >>

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夏休み

雨が降りそうだったが、駅舎は最終列車の午後9時までだった。がたが
たと音を立てて、駅員が窓口を閉める。「悪いな」小さな呟きを背に聞
きながら、リュックを手に持つ。他に誰もいない。今日はここで夜をや
り過ごし、明日はバスでノシャップ岬のつもりだった。橙色の外灯を頼
りに駅舎を出る。「さむぅ」思わず声が出た。外気は湿って冷たかった。
ヤッケのフードを伸ばして、頭にかぶる。「さて、どうしよう」駅前に
は何もなかった。幹線道路へと続く歩道脇に、黒いシルエットの土産物
屋が並んでいる。もちろんとっくにシャッターを下ろしていた。が、狭
い軒先は雨がしのげそうだったので、そっちへ歩き出す。「おい」土産
物屋の裏、ぼんやりとした暗闇に人影があった。声に聞き覚えがある。
まさか。「やっぱりおまえか」丸っこい顔がほころんでいた。

夏休みを持て余して、急行列車なら乗り放題といういちばん安い切符で
私は札幌にきた。西の果てから、ちょうど丸二日。そのまま納沙布、知
床、そしてノシャップというわけだ。何か見つかるかもしれないとか、
自分を見つめなおすとか、そんな高尚な思いはなにもない。ただただ、
何もすることがなくて、どうにもならなかっただけだった。黙々と予定
通りに移動し、パンをかじり、駅、バス停、公衆トイレなど屋根がある
ところで眠る。

「なんだか、ずいぶんと薄汚れてるな」しばらく私の顔を見ていた先輩
は、そう言うとくるりと踵を返した。三千キロ離れたローカル駅で、部
活の落ちこぼれと遭遇したというのに、何も訊かない。夜の闇を透かし
て、三角形のテントらしきものが見えた。やっぱり。なぜか納得する。
先輩はそういう人なのだ。いつも準備万端、まっすぐ進む。それに比べ
て私は。

ぼんやりと立ち尽くしている私に、テントから戻った先輩はマグカップ
を差し出した。「コーヒーだ、飲め。体があったまる」温めだが胃に沁
みるようだ。「島を返せ!」「は?」「いや、ノシャップ岬のあちこち
に看板があったんだ。で、島がすぐ近くに見えてさ。現実はいつも残酷
だなって思ったのさ」「はあ?」「明日は襟裳だ。もう寝るぞ」先輩が
親指でテントをさす。「はい」私はうなずく。ちょっとだけ温まった体
と気持ち。そして明日の予定が先輩と重ならないことにどこか安堵して
いる自分。

それでも待ってる夏休み。
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         今月のテーマ素材:  [夏休み]

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          [今月の巻頭詩]

      夏休み

      吉田拓郎の歌と共に近づいてくる
      まだ来なくていいよ
      永遠に来なくてもいいよ
      夏休み・・・

      森静野
      2015/06/27 09:35

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   ▽△▽△  4 行 詩 の 展 覧 会  △▽△▽ 

         テーマ素材 「 雨 」

  パラダイスオフィス ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ サヨナキドリ
  夏休み ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 森静野
  夏休み ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ タイム
  幼き日 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 実希

 ●作品表示の凡例 (作品は投稿順に並べてあります)
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タイトル
 4行詩本文
 (あとがき)
ペンネーム
投稿日時
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パラダイスオフィス

通勤電車に人混みはなく
嫌味な上司は有給消化
空調だってカケホウダイ!
ああ!素晴らしい夏休み!

サヨナキドリ
2015/06/19 22:07
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夏休み

吉田拓郎の歌と共に近づいてくる
まだ来なくていいよ
永遠に来なくてもいいよ
夏休み・・・

(あとがき)
想像しているうちが楽しみだから。

森静野
2015/06/27 09:35
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夏休み

首にラジオ体操のカード下げて
朝から 蝉しぐれの中 駆け回っていた
入道雲がしぼんで 夏が終わり告げるころ
日焼けした腕が ちょっぴり大人に見えた

タイム
2015/07/03 23:37
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幼き日

朝露で足を濡らしながら里芋の露を集め
墨をすり短冊を書き
何日も前から成長を見守ったスイカを冷やす
ひと月遅れの七夕は夏休みの一大イベント

(あとがき)
里芋の露で墨をすって短冊を書くと、字が上手になると聞いてました。

実希
2015/07/04 23:39
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[記録室]
投稿全作品数:7
推薦詩:4
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◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 編集室から ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

雨が降り続く日曜日です。梅雨前線が太平洋側に停滞して、今年は梅雨
明けが例年より遅くなりそうだとか。植えたばかりのゴーヤは元気いっ
ぱいですが、人間さまとしては、ちょっと日差しも恋しくなります。

今月は「夏休み」がテーマ素材でした。仕事のほうは夏休みを交代でと
る形で、一週間ほど休めますが、学生時代は40日くらいありましたね。
あんな長い休みをいったいどうやって過ごしたんだろうかと古いノート
を開いてみましたが、なんにも書いてありません。きっとぼんやり過ご
したんでしょう。巻頭詩には森静野さんの「夏休み」を選びました。た
しかに、私の世代は夏休み=吉田拓郎でありました。なつかしいです。
サヨナキドリさんのパラダイスオフィスにも同感。特にお盆の頃の空き
具合は最高ですね。

さて、来月(8月)号のテーマ素材は、「土産(おみやげ)」です。読
んで字のごとく、おみやげはその土地の産物を贈り物としたところから
始まった日本独特の習慣のようです。それが転じて、帰る人、別れる人
に手渡すものという感じにもなったとか。あなたの気になる土産やおみ
やげのある風景を四行詩でお寄せください。

8月号の配信は8月2日、投稿締め切りは8月1日です。
4行詩の投稿をお待ちしています。

                    編集人 ジョッシュ

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     発行日: 2015年7月5日(通算218号)
   総発行部数: 約200
     発行元: mbooks(ジョッシュ)
          http://www2c.biglobe.ne.jp/~joshjosh/index.html
     連絡先: prn81060_mbooks2アットyahoo.co.jp
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