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zoom RSS 月刊ポエム8月号「土産」

<<   作成日時 : 2015/08/02 14:25   >>

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画像


土産

部屋中に張り詰めた空気。
誰も息をしていないかのようだ。全員の神経は耳に集中している。38時
間22分11秒前にあった定期通信を最後に、スピーカは沈黙していた。額
に冷たい汗が流れる。肩から首にかけて重くて鈍い痛みもある。私だけ
ではない。おそらく、誰もまともに睡眠はとっていないはずだった。そ
して誰もが知っていた。もう残された時間は僅か。生命維持装置の稼働
限界まであと1時間37分49秒なのだ。

小さな咳払い。続いて吐息。短く、そして長く。前に並ぶ複数の頭がゆ
らゆら、ゆっくりと振れ始める。耐えてきた睡魔に、ついに飲まれる技
術者たちのようにも見えるが、むしろ、赤ん坊がイヤイヤしているよう
にも、私には映る。自分だってもう何回、頭を振ったろう。まるでそう
すれば、この悪夢のような時間から逃れられるのではないか。

冥王星から地球への長い楕円軌道を思ってみる。真っ暗な空間に白くボ
ンヤリと丸い機体が浮いている。太陽系の中心にある巨大な恒星と引力
バランスを操りながら、ゆっくりと帰還する探査シャトル。

さあ、今回はどんな土産を持って帰ってくるかな。

2日前までは、そんな気楽な会話が溢れていたのだ。わずか6秒とは言え、
タッチダウンしてデータを収集、そしてリフトバック(離星)もうまくいっ
た。しかし、木星の陰から不意に現れた障害、おそらく琵琶湖ほどの隕
石塊が事態を一変させた。避けるべく取りうる手段は全て試した。最後
はシャトル側で脱出用手動ジェットでの軌道変更もやった(それは、地球
帰還を難しくする選択肢だったが)。そして待った。クリアー(障害解消)、
そのひと言を。

残念だが。

スピーカーからセンター長の声が響く。残念だが、最悪の事態だ。私は
これから担当相に報告をする。みなさんにはここに留まって最後まで待っ
てほしい。沈痛な声が鼓膜を叩く。その時、レーダー画面に小さな光が
出た。部屋がどよめく。

あれは。

センター長が絶句する。背筋を冷たいものが走った。大きさですぐに分
かった。あれはシャトルではない。いや、シャトルの一部に過ぎない。
サンプルデータを詰め込んだカプセルロケットだけが、地球への軌道を
辿っているのだ。

土産だけが帰ってくる?
シャトルの乗組員は?

再び沈黙が支配した部屋に、レーダー画面が発する電子音だけが流れて
いる。もう、誰も動けない。
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         今月のテーマ素材:  [土産]

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          [今月の巻頭詩]

      帰省

      たくさんのお土産も嬉しいけれど
      元気な顔が一番だよと言う母は
      持って来たよりたくさんの
      お土産を持たせてくれる

      実希
      2015/08/02 07:15

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   ▽△▽△  4 行 詩 の 展 覧 会  △▽△▽ 

         テーマ素材 「 土産 」

  夏の風物詩 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 雨音奏
  待たせ人 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ サヨナキドリ
  確信犯 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ チビ○
  帰省 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 実希

 ●作品表示の凡例 (作品は投稿順に並べてあります)
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タイトル
 4行詩本文
 (あとがき)
ペンネーム
投稿日時
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夏の風物詩

ぎらきら光る夏の太陽
いやな渋滞通り抜け
いざ帰らん田舎えと
夏の土産をたくさんつめて

あとがき
初めてポエムを作って投稿してみました。上手く出来てるかわかりませ
んが心を込めて作りました。

雨音奏
2015/07/29 05:18
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待たせ人

土産にしたい幸福を
未だに成せず
ようやく成せたなら
君に笑って謝れる

サヨナキドリ
2015/07/30 08:58
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確信犯

いつの間にか見抜かれていた
嫌いな物好きな物
小さな手土産が
心をわしづかみ

チビ○
2015/07/31 15:50
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帰省

たくさんのお土産も嬉しいけれど
元気な顔が一番だよと言う母は
持って来たよりたくさんの
お土産を持たせてくれる

実希
2015/08/02 07:15
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[記録室]
投稿全作品数:9
推薦詩:4
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◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 編集室から ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

暑中お見舞い申し上げます。
記録的な暑さが全国で続きますが、お変わりありませんか。いよいよ夏
全開。海に山に、あるいは冷房の効いたカフェや居間など、居心地のよ
い場所で、この灼熱の2015年夏を楽しみましょう。

今月は「土産」がテーマ素材でした。夏休み、お盆にあわせて里帰りと
なるとカバンいっぱいに詰めるのがお土産ですね。でも、思い返すとた
しかに、行くときよりもより大きく膨らむ旅行カバン。巻頭詩の「帰省」
(実希さん)の風景にはまったくそううだったと頷く自分がおります。
でももらって喜ぶ顔をみるには、しっかりとなにいがいいんだろなと顔
を思い浮かべるのも大事です。チビ○さんの「確信犯」はそんな苦労の
裏返し。でも喜ばれる土産ってこっちも嬉しくなりますよね。

さて、来月(9月)号のテーマ素材は、「月曜日(Monday)」です。日
曜日の次にやってくる月曜日は、ブルーマンディという人もいるくらい、
ちょっと憂鬱な人も多いとか。あなたの月曜日はどうですか? 四行詩
でお寄せください。

9月号の配信は9月6日(日)、投稿締め切りは9月5日(土)です。
4行詩の投稿をお待ちしています。

                    編集人 ジョッシュ

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 メールマガジン: 詩とエッセイの月刊ポエム8月号
     発行日: 2015年8月2日(通算219号)
   総発行部数: 約200
     発行元: mbooks(ジョッシュ)
          http://www2c.biglobe.ne.jp/~joshjosh/index.html
     連絡先: prn81060_mbooks2アットyahoo.co.jp
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