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zoom RSS 月刊ポエム11月号「今更」

<<   作成日時 : 2016/11/06 07:52   >>

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☆今更

チリン。
ドアを押すと控えめな鈴の音がした。アンプに向かっていた二人の男が振り返って私を見る。一瞬の間があった。記憶のページをめくっているのだろう。それは私も同じだ。とうにしまい、ずっと忘れていた引き出し。その奥に眠っていた懐かしい顔を重ねてみる。
やあ。
それが36年ぶりの挨拶だった。ふたりもぎこちないが、笑顔になっている。その視線が手に提げたギターケースを確認した。私も手を少し持ち上げてみせる。昨夜、物置から探し出してきたが、ちゃんと弾けるかは分からない。それはたぶん、ふたりの男たちにも分かっているはずだ。こんな機会が来なければ、たぶんいつまでも埃に埋もれたままだったろう。
「そのアンプ、昔のもの?」
「まさか。秋葉原まで行って、安いやつを探してきたんだ。店ではちゃんと音が出たんだがなあ」
アンプのロゴに驚く。夢だったアメリカの音響メーカ名がそこにあった。
「歳をとるといいこともあるさ。今なら中古くらいはなんとか買える」
右奥にちゃんとしたドラムのフルセット、手前にマイクスタンドがふたつ。左にもうひとつ、たぶんベースアンプ? そして左端に。
「おいおい、あれはキーボードじゃないか」
シンセサイザーが世に現れた80年代、軽音楽バンドがこぞって採用した電子鍵盤楽器が鎮座していた。当時有名だった(今でも一流だが)日本のメーカロゴが天井の白熱電球を受けて光っている。
「あれは、昔のものだぜ」
私はキーボードのほうへと歩く。右スタンドにこすり傷。見覚えがある。
「なにを今更って言われたんだけど」
妻のとがった唇を思い出す。
「だろうと思って、俺たちからも声を掛けたさ」
「しかし、あいつは」
そう言いかけて思いあたる。私も来たのだ。もう二度と来ないはずの場所へ。年月は苦しみを薄め、悲しみを浚い、楽しさだけを掬い残すものらしい。

チリン。
背後で鈴が鳴った。

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☆今月の巻頭詩☆

いまさら

あいさつはたいせつ
はやねはやおき
よくかんでたべる
むだづかいをしない

森静野
2016/10/17 08:31
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☆4行詩の展覧会「嬉しい」

言い訳 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 作詩屋
いまさら ‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 森静野
届ける ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 叙朱

●作品表示の凡例 
(作品は投稿順に並べてあります)
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タイトル
4行詩本文
(あとがき)
ペンネーム
投稿日時
------------------------------------------------
言い訳

堂々と言い訳をすれば
然々すると思っている
清々するのは本人だけ
苛々するのは君の負け

作詩屋
2016/10/08 17:20
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いまさら

あいさつはたいせつ
はやねはやおき
よくかんでたべる
むだづかいをしない

(あとがき)
まだまだ、いくらでもあるな。
森静野
2016/10/17 08:31
------------------------------------------------
届ける

いまさらいまさらと行ったりきたり
だいじょうぶだよとそのたび重ねる
ポケットの手紙はしわになるし
やっぱネットにしようかな

叙朱
2016/11/6 07:25
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[記録室]
投稿全作品数:7
推薦詩:2
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◇ 編集室から ◇

秋が早足でやってきました。昨日今日と冷たい山風が吹き、出かける服装もかなりの重装備になってきましたが、お変わりありませんか。食欲の秋、エンジョイしてますか?

さて11月号のテーマ素材は「今更」でした。巻頭詩には森静野さんの「いまさら」を選びました。いつになっても、いくつになってもいまさらな教えは有効でしょう。子供の頃に繰り返されたことでもつい忘れて、後で後悔してしまうパターン、ありますよね。作詩屋さんの「言い訳」、いまさら言われてイラっとくるシーンでも、ほんとはゆったり構えられればいいんですが。

さて、来月12月号のテーマ素材ですが「落書き(graffiti」です。この頃、壁やシャッターを開放して自由に落書きさせるというスケールの大きいGraffitiも出てきましたが、私にとっての落書きとは、授業中にノートの片隅に描いたマンガでした。あなたはどうでしたか?あなたの落書きに関する思いやイメージを四行詩でお寄せください。

12月号の配信は12月4日(日)、投稿締め切りは12月3日(土)です。
4行詩の投稿をお待ちしています。

編集人 ジョッシュ
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メールマガジン:詩とエッセイの月刊ポエム11月号
発行日:2016年11月6日(通算236号)
総発行部数:約200
発行元:mbooks(ジョッシュ)
http://www2c.biglobe.ne.jp/~joshjosh/index.html
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